方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

方向音痴な言説

ドリーン・キムラ − 何を調べているのかさっぱりわからない「実験」

道順を覚えるとき、男は方角と距離を正確に把握し、女はランドマーク(目印)で把握する。 かなり多くの人が信じている俗説です。この俗説の出所となったのは、カナダのウェスタンオンタリオ大学のドリーン・キムラが1993年に実施した実験であると推測されま…

「自称・地図が読める人」は当てにならない

ごく当たり前のことですが、自己申告というものは、あまり当てにならないものです。能力調査をする際には、被験者本人の自己評価ではなく、他者からの測定可能なテストによる客観評価を採用したいものです。 ところが、自己評価のみで地図読み能力の調査を済…

単純能力の高さは、必ずしも複雑能力の高さを意味しない

1,234×5,678=? 薄型のポケット電卓でもできる簡単な計算ですが、暗算で5秒以内に正答できる人はそう多くはいないはず。 人間は、こんな簡単な計算もろくにできないくせに、はるかに難しいはずの抽象思考ができます。現在の技術では、抽象思考を機械にやらせ…

「地図が読めるようにならない」教材 − 悪用されるメンタルローテーション・テスト

前回の記事では、ちゃんと地図が読めるようになる教材や講習を紹介しましたが、一方で、「地図が読めるようになる」ことを謳い文句にしながら、どう見ても地図が読めるようにはならない教材も存在します。こうした教材は、主として営利目的の能力開発教室が…

メンタルローテーション(心的回転)って、何?

物体を回転させるとどのように見えるかを、頭の中だけで判断する能力のことを、メンタルローテーション(心的回転)といいます。メンタルローテーションに関しては、下記リンク先がわかりやすくまとまっています。・金沢学院国際文化学科のウェブページより …

男脳と女脳(2) − 怪しい本の見分け方

前回の記事の続きです。 前回取り上げたバロン=コーエンの『共感する女脳、システム化する男脳』は、まだしも学術本風に書かれていましたが、「男脳・女脳」について書かれた本の大部分は、学術の体裁など為していない怪しげな自己啓発本です。この手の本は…

男脳と女脳(1) − そもそも無意味な分類ではないか

拙ブログで取り扱う話題は、極力、地図読み・ナビゲーション関連に絞るつもりですが、方向音痴な言説を論ずる際に、「男脳・女脳(男性脳・女性脳)説」は避けて通れません。当然ながら、私は神経科学分野の専門知識は持ち合わせていないので、(専門知識の…

インチキ脳科学について

拙ブログは、巷に出回っている地図読み・ナビゲーションに関するニセ科学的俗説のおかしさを指摘するために立ち上げました。これまでの記事は、本丸に攻め込む前に、まず外堀をちまちま埋め立ててきたといったところです。これからは、内堀も埋めてしまいま…