方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

コンパスを使ってみよう!

 人間は、方角を感覚器官で直接感知する能力を持っていません。だからこそ、コンパスの使い方をみっちり練習するわけです。
 登山で用いるのは、プレート(ベースプレート)タイプのコンパスです。コンパスと透明プレートが一体型となり、プレート部の先端に矢印(または > 印)が描かれています。実際どんな物かは、下記リンク先の写真を参照してください。 


・シルバ社のプレートコンパス
http://www.evernew.co.jp/outdoor/brand/silva/index.html 


 プレートコンパスは、シルバ社が圧倒的なシェアを誇っているので、他社のプレートコンパスまでもが節操無く「シルバコンパス(略して単にシルバまたはシルコン)」と呼ばれています。しかしやはり、シルバ社以外のメーカーに対して失礼でしょう。
 以下、単に「コンパス」と表記すれば、プレートコンパスを指します。 


 コンパスの基本的な使い方は、下記リンク先の通り。 


・コンパスの使い方
http://www.be-tackle.com/outdoor.index/accessory/map/tsuaikata/tsukaikata.htm 


 他にも、「コンパス 直進」、「コンパス “1-2-3”」などのキーワードで検索すれば、使い方の説明がいろいろ出てきます。また、コンパスを購入すれば、使い方の説明書が必ず付いています。
 コンパスは単体で使っても意味が無く、地図とセットで使って初めて意味を持ちます。


 コンパスを使う際、姿勢が大事です。コンパスは胸の高さで水平に構え、少し体に押し付けるようにして、真上から見下ろすこと。真上から見下ろすことを意識しすぎるあまり、お辞儀をしないこと。体をねじらず、まっすぐ体を前に向けること。随分細かいことを口やかましく言っているようですが、これらが精度に大きく影響します。手順をきちんと守りさえすれば、目標物(見えていてもいなくても構いません)は、ぴたりと体の真正面に来ます。
 なお、目標物を体の真正面に置くことは、非常に重要です。人間は、例えば右斜め前方30度と40度の違いを正確には識別できませんが、体の正面から10度もずれていれば、必ず気付きます。つまり、人間の方向に関する感覚は不正確だが、体の正面方向だけは非常に正確に識別できるという特性を活かすことにより、精度の高いナビゲーションが可能になります。 


 ここまでで、二度の強調が出てきました。おさらいしておきましょう。 

  • 人間は、方角を感覚器官で直接感知する能力を持っていない。
  • 人間の方向に関する感覚は不正確だが、体の正面方向だけは非常に正確に識別できる。 


 これらのことは、数多くの傍証により裏付けられます。コンパスは、こうした人間の特性あるが故の道具だといえます。 


 さて、実はこれで、「方向音痴な言説」を見破るための強力な武器を手に入れたことになります。方向音痴な言説には、人間の方向に関する感覚に対して、致命的な間違いを犯しているものが多々あるからです。例えば、ここに挙げた11項目の言説のうち、4.、9.が一気になぎ倒せることにお気付きでしょうか?