方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

ホワイトアウト・ナビゲーションって、どうやるの?

 前回の記事の続きです。 

 踏み跡が無い場所で、濃霧のため視界が悪い中、目的地に行くことを想定します。ただし、高度計、GPSは使用しないものとします。 

 実は、現在地からの方角と距離さえ分かれば、視界など無くても正確に目的地に辿り着けます。目的地への方角は、コンパスを使えば正確に割り出せます。コンパスのプレート上の矢印が指し示す方向に目的地があります。
 次に距離ですが、人間の距離に関する感覚は不正確です。もちろん、距離を大雑把に見積もることは可能ですし、あまりに距離が違えば「おかしい」と感づくこともできます。ただ、あまり厳密なものではありません。
 では、方角同様、ツールに頼ればいいのですが、コンパスに匹敵するほど軽量コンパクトで精度の高い距離測定器はありません(GPSを除く)。ナビゲーションは測量ではないので、距離の測定器を持ち歩くのは非現実的です。
 では、どうすればいいのか。目印に頼ればいいわけです。
 最短距離で目的地に行こうとせず、たとえ遠回りになっても、尾根筋・谷筋のように、地形的な特徴のはっきりしたルートを選択するのもよいでしょう。或いは、小ピーク・鞍部(コル)など、現在地を正確に特定できる目印的な地形を拾うようにルート取りするのも良いやり方です。場合によっては、「デポ旗」と呼ばれる赤旗を打って目印にすることもあります。こうして目印を活用すれば、「距離」という不正確な要素に頼らなくても済みます。 

 ナビゲーションにおいては、単一の情報に頼らず、複数の情報に基づいてルート判断するのが鉄則です。ただ、正確性の低い情報への依存度順位は下げておくのが合理的です。多くの場合、方角や距離よりも目印のほうが、圧倒的に確実性が高いものです。 


 では、今回の強調部分のおさらいを。 

  • 人間の距離に関する感覚は不正確。
  • 目印に頼ればいい。 

 さあ、これで、方向音痴な言説11項目のうち、7.、9.に赤信号が灯りました。