方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

インチキ脳科学について

 拙ブログは、巷に出回っている地図読み・ナビゲーションに関するニセ科学的俗説のおかしさを指摘するために立ち上げました。これまでの記事は、本丸に攻め込む前に、まず外堀をちまちま埋め立ててきたといったところです。これからは、内堀も埋めてしまいましょう。 


 テレビや雑誌、自己啓発本などで、「自称脳科学者」を見かける機会がよくあります。しかし、素人目にも胡散臭い。人間の行動を、「それは脳がそうなっているからです」と、一見科学っぽく説明するものの、「脳」という単語を「人間(ないしは他の適切な単語)」に置き換えても意味が通じてしまいます。しかも、「脳」という単語を取り去ったら(「脳」の単語があっても)、実に陳腐な一般論に過ぎなかったりします。さらに、脳について何も知らない素人ですら、あからさまな矛盾点や論理の飛躍を容易に指摘できるようなことを平気で喋っています。
 脳科学と称して、地図読みやナビゲーションに関するデタラメが流布されている現状は、本当に目に余ります。

 マスメディア上に横行する怪しい脳科学は、「神経神話」、「通俗脳科学」、「似非脳科学」、「インチキ脳科学」などと様々に呼称されています。多分、最もよく使われている呼称は「神経神話」でしょうが、初めて聞く人にはさっぱり意味のわからない言葉ではあります。「通俗脳科学」も婉曲表現すぎて意味が通じにくいし、「似非脳科学」は漢字を読めない人がいるかも、ということで、拙ブログでは、そのものずばりの「インチキ脳科学」の呼称を採用することにします。 

 インチキ脳科学とは何か、どういう問題点があるのか、2010年12月11日に、南山大学でシンポジウム「脳科学とどうつきあうか」が開催されました。講演記録は、下記リンク先にまとめられています。非常に長いのですが、全部に目を通すだけの価値はあります。さり気に文字サイズが大きく、ディスプレイ上でも読みやすいのが嬉しい配慮です。 

南山大学 社会倫理研究所 設立三十周年記念講演集
脳科学とどうつきあうか(PDF形式)
http://www.ic.nanzan-u.ac.jp/ISE/japanese/publications/book/2011neuro-book.pdf 

 上記シンポジウムにおいて、インチキ脳科学の具体例として主に俎上に載せられているのは、「ゲーム脳」と「脳トレ」です。方向音痴な言説と関係の深い「男脳・女脳」についても、少しだけ触れられています(本文p73〜78、PDFではp83〜88あたり)。 

 インチキ脳科学の問題点を指摘した一般向けの書籍も出版されています。

『脳ブームの迷信』  藤田 一郎著  飛鳥新社
 著者は前述の南山大学シンポジウム講演者の一人です。
脳ブームの迷信 (家族で読める family book series) (家族で読めるfamily book series―たちまちわかる最新時事解説)


脳科学の真贋―神経神話を斬る科学の眼』  小泉 英明著  日刊工業新聞社
脳科学の真贋―神経神話を斬る科学の眼 (B&Tブックス)