地図を読むにあたって、コンパスの使いこなし術の習得は必須です。見方を変えれば、人間の方角・方向に関する感覚は不正確だという暗黙の大前提があるわけです。感覚だけで方角・方向が正確にわかるのなら、コンパスなど要りません。
このように、人間の能力には限界があることを当然の前提とした上で、不得手を補う読図技術はたくさんあります。
物体が回転したとき、元の物体との対応関係を把握するのが難しいことは、経験的にわかっています。物体の抽象度が高いほど、難度も増します。一般に人間はそれほどメンタルローテーションを得意とするわけではありません。個人差はあっても、所詮ドングリの背比べでしょう。
地図の抽象度は非常に高いので、実際の風景と地図の向きが合っていなければ、対応関係を理解するのが難しくなります。だからこそ、読図の基本技術として正置を教えているのです。
つまり、人間はメンタルローテーションが苦手だということを当然の前提とした上で、メンタルローテーション能力の低さを完全に無効化する読図技術がとっくの昔に確立され、読図の基本のキとして真っ先に教えられていることになります。
メンタルローテ−ション・テストの成績が悪い人は地図が読めないのか、既に答は出ています。