方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

「自称・地図が読める人」は当てにならない

 ごく当たり前のことですが、自己申告というものは、あまり当てにならないものです。能力調査をする際には、被験者本人の自己評価ではなく、他者からの測定可能なテストによる客観評価を採用したいものです。
 ところが、自己評価のみで地図読み能力の調査を済ませてしまう困った例が結構 見受けられます。確かに、アンケートを配布・回収するだけで済む(それだけでもかなり大変だったりします)自己評価調査に比べ、 客観的な調査はお金と手間暇がかかるため、ある意味仕方のない面もあります。ただ、自己評価の調査であれば、調査結果にその旨をきちんと説明し、客観的にはどうであるか全くわからないことを明記するのが当然でしょう。その当然のことをやらずに、あたかも自己評価が客観的な能力を示しているかのように公表するのが問題です。
 典型的な例が、下記リンク先における調査です。 

・レポセン 「地図」を見るのは得意ですか?
http://reposen.jp/1363/6/39.html 

 調査日時は2008年3月13日。
 調査対象はインターネットユーザーに限定されるとはいえ、ネットリサーチ社であるナビリサーチが調査し、有効回答数が78,663件もある大規模調査です。これだけの調査を実施するだけの力量がありながら、調査結果報告はなんだかなあ、といったところです。ちょっと引用してみましょう。 

気になる結果は…予想通りとでもいいましょうか?やはり男性は得意という方が多いですね。「得意」31.5%、「どちらかというと得意」41.8%、併せると約7割(73.3%)の方が得意であるとお答えでした。一方女性は「得意」13.9%、「どちらかといいえば得意」30.4%、併せると約4割(44.3%)の方が得意と感じているようです。これらの結果からも女性は苦手というのがうかがえますね

 調査結果報告としては全くその通り。ただし、「得意」と回答した人が、「苦手」と回答した人より本当に地図を読む能力が高いかどうかは、何ともいえません。
  

苦手と感じている方のコメントでは「地図をついつい回してしまう」(後略)

 相対的正置ができるとは、実は結構 地図が読めるんじゃ…… 

一方得意と感じている方は(中略)東西南北がいつも把握できているという方も多いですね。

 それは単に、ドボンに嵌っているだけではないかと…… 


 ネット調査のみならず、学術論文においても、自己評価を以て地図を読む能力であると判定しているケースが幾つか見つかり、頭の痛いところです。