方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

『NHKスペシャル 女と男』(2) − 内容要約

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 『NHKスペシャル 女と男』の地図読み・ナビゲーション関連部分は、前回記事の最後二つのリンク先に詳述されていますが、確認を兼ねて、番組内容を青字で要約しておきます。 


 カナダ・レスブリッジ大学のデボラ・ソーシャー博士は、女性は地図が読めないという説に疑問を持っていた。博士は、男女42名(男性何名、女性何名かは不明。書籍版には書いてあるかも?)を対象に、公園墓地に隠したコインを見つけさせる実験を実施した。
 最初に、方角と距離だけを指示したメモを被験者に渡し、途中で道を間違えた回数を数えた。 

・ 南東に曲がり19メートル進め
・ 東へ曲がり60メートル進め
・ 北西へ曲がり17メートル先がゴール 

などなど。
 被験者はコンパスを持っていないが、男性は時刻と太陽の位置から方角を割り出した。女性は何度も道を間違えた。
 

・間違えた回数の平均
 女 9.86回
 男 2.95回
 

 次に、コインの隠し場所を変え、今度は目印と左右だけを指示したメモを渡した。 

・ 聖人像のところで右に曲がれ
・ 眠れる少年像のところで左に曲がれ
・ まっすぐ進んだ先のV字型に枝分かれした松の木がゴール
 

などなど。今度は男性が何度も間違えた。 

・間違えた回数の平均
 女 2.85回
 男 4.02回
 

 数百万年前、人類の祖先はアフリカで狩猟採集生活を送っていた。
 男性は狩りを担当していたが、動き回る獲物を遠くまで追っていたので、方角と距離を頼りにまっすぐ住居に戻れるように、空間認知力が発達した。
 一方女性は、住居の近くで木の実などを採集していた。樹木は動かないので、目印を頼りにした。
 目印の認識方法はよく分かっていないが、ソーシャー博士の立てた仮説は、「三日月形の草むらの近くに芋がある」「大きな木が実をつける」というように、女性は目印を言葉で覚えていたのではないかというもの。博士によれば、女性は地図を読めないと言う決まり文句は、単に男性の得意なやり方に限定したときの話に過ぎないのだという。
 ソーシャー博士曰く、
「女性が地図を読むのが苦手だという人は大勢います。しかし、私の意見では、それは地図に女性が有利な情報がかかれていないせいだといえるのです。地図には、ほとんど距離と方角の情報しかありません。女性は、自分の知らない目的地に行くとき、本来得意な目印を活用すればいいのです。そうすれば、女性も男性をしのぐ成績を収めることができるのです」
 



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