方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

はじめに

 昨今の登山ブームに伴い、地図読みやナビゲーションに興味を持つ人が増えてきたのは喜ばしいことです。各地で開催される読図講習は、概ね盛況であると聞きます。
 しかし一方で、地図読みやナビゲーションに関する根拠に乏しい俗説が数多く流通しています。私はそうした俗説を、「方向音痴な言説」と名付けました。 「方向音痴」という言葉は、本来「よく道に迷う行動傾向、またはそのような行動傾向を持つ人」という意味ですが、比喩的に用いられることもあります。つまり、「(考え方などの)筋が悪い、デタラメである」という意味で使われる場合もあるわけです。要するに「方向音痴な言説」とは、地図読みやナビゲーションに関する俗説、ニセ科学、インチキ脳科学の集合体であり、思考の方向音痴の産物です。
 具体的には、以下の言説が「方向音痴な言説」に該当します。 はっきり間違いだと断定できるものもあれば、完全に間違いとは言いきれないが、無茶といっていいほどの誇張や拡大解釈・ミスリードが為されているので俗説であると見なせるものもありますが、程度の差こそあれ、全部与太です。 


 1. 男は地図が読めるが、女は読めない。
 2. 方向音痴な人は、動くものを目印にしている。
 3. 地図が読めるか否かは、空間認識能力が高いか低いかで決まる。
 4. 方向音痴でない人は、常に東西南北を把握している。
 5. 進行方向に合わせて地図を回す人は、地図が読めない。
 6. 進行方向に合わせて地図を回すと、方角が解らなくなる。
 7. 目印に頼る人は、地図が読めない。
 8. 方向音痴でない人は、現在位置を常に俯瞰的に把握している。方向音痴な人にはそれができない。
 9. 男は距離と方角で指示すると迷いにくいが、目印で指示すると迷いやすい。女はその逆。
10. 地図には、ほとんど距離と方角の情報しか記載されていない。
11. メンタルローテーション(心的回転)テストで好成績の人は、地図が読める。 
 

 どれも広く流布されているものばかりで、全部初耳だという人はむしろ少ないかもしれません。えっ、全部信じてたって!? 
 残念ながら、方向音痴な言説は、そのおかしさを全くといっていいほど指摘されることなく広まっています。このブログは、そんな状況を少しでも変えたいと願って開設しました。誰もが閲覧できるネット上に対抗言説を置くことで、方向音痴な言説の方向音痴ぶりがもっと知られてほしいと。そして、真っ当な読図・ナビゲーション技術にもっと関心を持ってほしいと。 
 

 なお、このブログは、その性質上、きつい批判を大量に行うことになる予定ですが、無名の個人が運営するブログ・ウェブページは一切批判対象にしません。あくまでも、公的メディア(テレビ、新聞、書籍雑誌、ネット配信社など)上の言説及び公的メディア上で情報発信している人のみを批判します。言い換えれば、方向音痴な言説は、公的メディア上に大手を振ってまかり通っているわけです。
 方向音痴な言説の多くは、インチキ脳科学によってもたらされています。とはいえ、ナビゲーションの基礎をおさえておけば、脳に関する専門知識などなくても、大抵は見破ることができます。「脳科学的説明」とやらが どんなに尤もらしく見えても、ナビゲーションとしてダメダメであれば、「脳科学的説明」も無意味になるからです。ですから、ナビゲーションの基礎的解説にも力を入れることにしました。また、地図読みは、野外でこそ威力を発揮するもの。登山・アウトドア関連のちょっとした読み物も随時アップしていく予定です。
 とはいえ、私(管理人)の不在や多忙で更新が滞ったり、コメントの承認やお返事が遅れたりすることも多々あろうかと思います。読者の方々には何卒ご容赦いただきたく存じます。今後もよろしくお願い申し上げます。