方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

登山道を外すとき

前回の記事の続きです。 私の知人が実際に登山道を外した(または外しかけた)3件の事例を、以下に紹介します。3事例とも、はっきりした踏み跡がついている登山道上で起こったものです。 Aさんの場合 − 直進方向についた踏み跡に気を取られる Aさんが先行し…

一本道であっても、道迷い遭難は起こる

山においては、毎年多くの道迷い遭難が発生しています。警察庁から年度毎の遭難概況が発表されています。・警視庁生活安全局地域課 平成22年度中における山岳遭難の概況 (PDF形式) http://www.npa.go.jp/safetylife/chiiki28/h22_sangakusounan.pdf 平成…

研究結果は如何にして不正確に広められるか

前回の記事では、ドリーン・キムラの研究を紹介しましたが、これが大手メディアや口コミによってどう歪曲されて広まっていくか、格好の事例が存在します。フジテレビ系列で1999年2月4日に放映された『江角マキコの恋愛の科学』です。 ・『江角マキコの恋愛の…

ドリーン・キムラ − 何を調べているのかさっぱりわからない「実験」

道順を覚えるとき、男は方角と距離を正確に把握し、女はランドマーク(目印)で把握する。 かなり多くの人が信じている俗説です。この俗説の出所となったのは、カナダのウェスタンオンタリオ大学のドリーン・キムラが1993年に実施した実験であると推測されま…

「自称・地図が読める人」は当てにならない

ごく当たり前のことですが、自己申告というものは、あまり当てにならないものです。能力調査をする際には、被験者本人の自己評価ではなく、他者からの測定可能なテストによる客観評価を採用したいものです。 ところが、自己評価のみで地図読み能力の調査を済…

「地図を読む能力」を調査することの難しさ

ある属性を持つ集団が、どの程度地図を読む能力を有しているか、調べるにはどうしたらいいでしょうか。ただし、調査対象人数は100人以上、「地図を読む能力」をきちんと数値化して、比較評価を可能にすること。 まず、「地図を読む能力」をどう定義するか、…

単純能力の高さは、必ずしも複雑能力の高さを意味しない

1,234×5,678=? 薄型のポケット電卓でもできる簡単な計算ですが、暗算で5秒以内に正答できる人はそう多くはいないはず。 人間は、こんな簡単な計算もろくにできないくせに、はるかに難しいはずの抽象思考ができます。現在の技術では、抽象思考を機械にやらせ…