方向音痴な言説

地図・ナビゲーションにまつわる俗説を取り上げます

男脳と女脳(3) − 男は問題解決、女は共感という俗説は、なぜ人口に膾炙し続けるのか

関連過去記事 
男脳と女脳(1) − そもそも無意味な分類ではないか

男脳と女脳(2) − 怪しい本の見分け方

 

 当ブログは、もともと地図・ナビゲーションにまつわる俗説のおかしさを指摘する目的で立ち上げました。一方、地図・ナビゲーション関連の俗説の出火元である男脳・女脳説も輪をかけてひどい代物なので、こちらも批判してきました。

 
 
参照 
『話を聞かない男、地図が読めない女』 (1) − 影響力の絶大さ 

『話を聞かない男、地図が読めない女』 (2) − 男脳・女脳テスト 

『話を聞かない男、地図が読めない女』 (3) − 男は狩りをしない 

『話を聞かない男、地図が読めない女』 (4) − 空間能力と地図 

『話を聞かない男、地図が読めない女』 (5) − ナビゲーションと地図 

『話を聞かない男、地図が読めない女』 (6) − 新装版発売 


 巷では常識のように「男は問題解決、女は共感」と言われます。まるで「問題解決」と「共感」が相容れないような言い方ですが、おかしな話です。「問題解決」の反対語は「問題未解決」、「共感」の反対語は「反感」です。そもそも、問題に対して働きかけた結果、現状よりよい方向に着地するのが「問題解決」であり、「共感」は心的状態ですから、両者は全く別軸だし、いくらでも両立できます。
 しかも、巷の自己啓発系書籍やウェブサイトなどで「男は問題解決、女は共感」の例として挙げられている「男が提示する解決策」とやらが、ひどく的外れだったり、自分もできやしないことをさも簡単にできることのように口先だけで大言壮語していたり、肥大化した優越感情を満たすだけの自己満足説教だったりして、それこそ何の解決にもなっていないのが笑えます。まさに「問題未解決」ですね。
 さらに厄介なのが、「男は問題解決、女は共感」なんてヨタを真に受けた男、もしくは自称男脳の女が「問題解決する自分」をアピールして自慢話を始めることです。この手の人たちに反論しても、反感を買って根に持たれるだけでしょうし、かといって、面倒ごとを恐れて相手に調子を合わせてひたすら相槌だけを打っていたら、自分は賛同されていると勘違いして増長し、余計に周囲に精神汚染の火種を放火して回るのが目に見えているし、どちらに転んでもお手上げです。

 「共感を求める女と違って問題解決する男脳の自分」アピールする人には、とりあえず
「そうですね~あなたは共感だけを求める感情的な女と違って論理的ですね~問題解決しますね~さすが~すご~い」
とバカっぽく同意しておけば、相手も黙ってくれるようです。皮肉が通じているのかどうかは知りませんが。ともかく、ひたすら共感してほしいだけなのは男脳(笑)とやらも同じだし、どうせ共感してほしいだけなら他愛もない話をすればいいものを、「愚かな女と違う男脳の自分スゲー」アピールして同意を求めずにはいられない己の醜悪さに気づいてほしいものです。 


 この手の困ったさんについては、過去記事でも取り上げています。
なぜ信じてしまうのか? 

 

 「男は問題解決、女は共感」という俗説が日本で広く信じられるようになったのは、例によって『話を聞かない男、地図が読めない女』(以下、『話を~』と表記します)の影響だと見て間違いないでしょう。そして、これまた例によって、この説を最初に提唱したのは『話を~』ではありません。
 「男は問題解決、女は共感」説の最古の出所は、私の知る限りでは、ジョン・グレイ著『ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた』(2001年、三笠書房より邦訳出版)です。 

 

・ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた 
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E2%80%95%E7%94%B7%E3%81%A8%E5%A5%B3%E3%81%8C%E7%9F%A5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%81%8F%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%80%8C%E5%88%86%E3%81%8B%E3%81%A1%E6%84%9B%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB-%E7%94%B7%E3%81%AF%E7%81%AB%E6%98%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E3%80%81%E5%A5%B3%E3%81%AF%E9%87%91%E6%98%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F-%E7%9F%A5%E7%9A%84%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%81%8B%E3%81%9F%E6%96%87%E5%BA%AB-%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3-%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%A4/dp/4837971768 

 

 ジョン・グレイ本の原著は1992年アメリカで出版され、すぐにベストセラーになりました。一方『話を~』は、1999年にイギリスで事実上の自費出版です。放っておけば自然消滅する定めの本でしたが、日本の主婦の友社が邦訳を出版したところベストセラーになり、その後海外でもヒットしました。『話を~』は、ジョン・グレイ本をかなりパクっています。
 因みに、ジョン・グレイ『ベスト・パートナーになるために』の表紙の宣伝文句は「全世界で5000万部、日本で100万部突破!」、一方『話を~』の宣伝文句は「日本で200万部、全世界で600万部」です。『話を~』は主に日本で売れていることがわかります。ジョン・グレイ本は、日本での発行部数こそ『話を~』に劣りますが、世界的にはこちらの方が売れています。『話を~』が欧米ではそれほど売れなかったのは、二番煎じ臭が強かったからかもしれません。まあ、『話を~』同様、ジョン・グレイ本もトンデモ本であり、著者はスピリチュアル系自己啓発ビジネスの人ですが。
 ジョン・グレイは心理学博士を名乗り、著作は心理学の知見に基づいていることを売りにしていますが、全くあてになりません。ジョン・グレイについては以下の記事を参考に。 

 

・WIKIPEPIA John Gray (American author)(英語)
https://en.wikipedia.org/wiki/John_Gray_(American_author) 

 

 上記リンク先において Alma mater の項目に Maharishi International University, Columbia Pacific University と記載があります。Maharishi International University と聞いてピンとくる人もいるでしょうが、これ、スピリチュアル系です。 Columbia Pacific University は名門コロンビア大学と紛らわしいですが、ディプロマミルです。ディプロマミルを知らない人は、以下の記事をどうぞ。 

 

・ブログ 幻影随想 より 2007年07月23日付記事

 文部省がディプロマミル撲滅に重い腰を上げた模様
http://blackshadow.seesaa.net/article/49008246.html 

 

 上記リンク先にも書いてありますが、ディプロマミル学位取得者の大半は詐欺の被害者であり、責めるのは酷です。ただしジョン・グレイの場合、心理学博士であることを売りにしているのですから、経歴に箔をつけるための確信犯でしょう。因みに Columbia Pacific University は米国裁判所の命令により閉鎖させられています。 

 

 嘘も百回言えば何とやらのことわざ通り、「男は問題解決、女は共感」のフレーズも繰り返し語られ続けてすっかり真理であるかのように錯覚されていますが、たとえ何億回繰り返し語られようと、四半世紀以上前のトンデモ本一冊分の情報価値しかありません。 

 

 男脳・女脳の自己啓発ビジネスでは、男脳と女脳の違いにより仲違いや衝突が起きると説明するのが常套手段です。曰く、男脳は問題解決や結論重視なので、女の話の腰を折ったり、「結論を先に言え」「だったら××しろ」などと言いがちで、共感してほしいだけの女脳とはすれ違うそうです。で、男脳と女脳の違いを理解すれば、夫婦円満になるんだとか。――――アホくさーっ! こんなの本気で信じている人(特に女性)なんているんですかね。
 えっ、この説は当たっているし、私は本気でこの説を信じているだって? ほほ~。それじゃ、男脳・女脳の自己啓発ビジネスが提唱する説は正しいと仮定しましょう。問題解決の男脳と共感の女脳の違いが喧嘩を生むんですよね? だったら違いを無くせばいいんです。男は共感を必要としていないんだから、男が何を言っても共感は不要、「大変だったね」「つらかったでしょう」などの言葉は禁句です。男が何か話し出せば2秒で男の話の腰を折り、「結論を先に言え」「だったら××しろ」などと言い、常に解決策(笑)とやらを提示しましょう。そうそう、男脳(笑)にとっては、「おまえが悪い」「だったらやめれば?」程度の物言いが問題解決(笑)ですとさ。男相手には男脳(笑)で応じましょう。こんな会話を一年も続ければ、夫婦円満間違いなし、喧嘩も治まります。
 えっ、こんな会話、一年どころか一回やっただけでも相手の男がヒステリーを起こすのが目に見えていて、身の危険すら感じるからできないって? ほ~らやっぱり、こんな説なんて嘘っぱちだってこと、ちゃんとわかってるじゃないですか。自分がやられりゃ壮絶なヒステリーを起こす対応を女相手にはする男って、要するに女を見下しているんですよ。「男は共感より問題解決だからしかたない」なんて自己欺瞞でごまかしてないで、性差別の現実を受け止めないと。

 自己啓発ビジネスでは、男相手に「問題解決重視の男と違って女は共感重視だから、女の話には解決策を提示せずに共感しておけ」とよく言いますが、女相手に「共感重視の女と違って男は問題解決重視だから、男の話には共感せずに解決策だけ提示しておけ」とは決して言いません。もうおわかりですね。あっという間に嘘がバレてしまうからです。 

 

 結局、「男は問題解決、女は共感」説なんて、女相手の会話支配に失敗した男の精神勝利法にすぎません。会話支配の失敗とは、具体的には以下のような状況を指します。

・女に反論された。
・女が「合コンさしすせそ」(さすが~、しらなかった~、すご~い、せんせ~い、そうだったんですか~)的な感情接待をしてくれなかった。
・女相手にマウンティングや説教をして優越感情を満たそうとしたら拒絶された。
・女が自分の話に共感・賞賛してくれなかった。  

 そう、たとえ会話支配に失敗しても、「男の自分は解決策を提示したが、女は共感してほしいだけだ」ということにしてしまえば、いかにも自分の方が正しく、相手の女が幼稚で間違っているかのように思いこめるんです。そして、問題解決なんかできない己の無能さも直視せずにすみます。――――たとえそれがハリボテの幻想だったとしても。
 まあ、男が女相手の会話支配に成功して、女がひたすら「合コンさしすせそ」で男の話に相槌を打っている状況であっても、何の皮肉も矛盾も感じることなく「男は女と違って会話に共感は求めていない」と信じ込んでいられるのでしょう。 

 

 ともかく、「男は問題解決、女は共感」説は非常にいい一次スクリーニングになります。この説を言い出した相手とは距離を置き、天気の話だけするのが吉です。

ブログ移転のお知らせ

 2011年より、はてなダイアリーにおいて当ブログ『方向音痴な言説』を運営してまいりましたが、2019年春に、はてなダイアリーサービスは終了予定となりました。詳細は下記リンク先に書いてあります。 

  つきましては、本日2018年10月19日をもちまして、はてなダイアリー内に置いていた過去記事すべてを、はてなブログへと引越しいたしました。旧はてなダイアリー記事にアクセスいただいても、新はてなブログ記事へとリダイレクトします。

全く地図を読めない人のための、独学地図読み上達講座

 地図読み初心者が上達したければ、指導実績のある上級者に直接教えてもらうのが最も効率的です。指導実績のある上級者であれば、指導対象者の習熟度に応じた適切な課題を選び、上手に教えてくれるものです。しかし、身近にそんな人はなかなか見つからないのが実情でしょう。
 このエントリでは、道路地図、市街地図、グーグルマップなどを見てもちんぷんかんぷんだけれども、人並みに地図を読めるようになりたいと願う人を対象に、一人でできる地図読みの練習方法を解説していきます。 
 

ステップ1 最初は自宅周辺を歩いて練習

 全く泳げない人が水泳の練習をする時、何が何でも泳がなければならない場所(=足の届かない水深の場所)で練習したりしませんよね。ちゃんと足が届いて、泳ぐ必然性のない場所で練習するものでしょう。地図読みも同じです。
 全く地図を読めないのならば、何が何でも地図を読まなければ到達できない場所(=全く行ったことのない知らない土地)で練習するのではなく、最初は自宅周辺・職場周辺など、いつも通い慣れていて、地図など読む必要もなく迷いようのない場所で練習を始めましょう。 

 まずは自宅周辺の地図を用意しましょう。家一軒一軒の世帯主の苗字まで記載されている詳細住宅地図がベストです。自治体によっては、そのような地図を各戸に配布しているところもあります。市町村役場や地元不動産屋に問い合わせれば、詳細地図を無料または格安で入手できる場合もあります。
 ゼンリンの住宅地図のプリントサービスを利用すれば、コンビニのマルチコピー機にて、縮尺1,500分の1住宅地図を入手できます(2016年8月現在1枚300円)。 

ゼンリン住宅地図プリントサービス
http://www.zenrin.co.jp/product/service/j-print.html 

 詳細住宅地図を入手したら、地図上で自宅を見つけてください。自宅住所の番地をもとに地図上の範囲を絞り込み、一戸建てであれば自分の苗字、集合住宅であればアパート・マンション名を探して特定しましょう。見つけたら、色ペン・マーカーなどでチェックを入れるとよいでしょう。あ、当然ですが、地図製作後に建設・引越しした家であれば、地図には新しい情報が反映されていませんので注意してください。 

 では早速、詳細住宅地図と色ペンを持って、自宅周辺の道を歩いてみましょう。最寄り駅、行きつけのコンビニ、近所の病院など、よく行く場所と自宅を往復してみます。あらかじめ地図上の目的地にもペンでチェックを入れると分かりやすいです。
 家を出たら、地図を回して、地図の向きを実際の風景に合わせましょう。カーナビやスマホの地図が進行方向に合わせて回るのと同じ要領です。この作業を「正置(または整置)」といい、地図読みの基本になります。隣家との位置関係、道路の形状などの情報をもとに、地図を正置してみましょう。時間はいくらかかっても構いませんから、落ち着いてやってください。 

 地図が正置できたら、目的地に向かって歩き出します。最初のうちは、家一軒一軒の表札と地図を照合しながら歩きましょう。地図を見慣れてきたら、要所要所で地図と現地を照合するだけでいいです。自分の通ってきた道筋を、地図に色ペンでライン引きしてみましょう。地図と睨めっこしながら歩いているのを人に見られると恥ずかしいものですが、本気で地図を読めるようになりたければ気にしてはいけません。

 曲がり角で曲がったら、地図が進行方向に合うように正置しなおしてください。本来なら、最初に自宅の前で地図を正置した時点で、地図の向きと実際の向きは合っていますから、道を曲がっても地図の向きは変えずに自分が回り込むようにすれば、正置状態は保てるはずです。しかし、いきなりそんな器用な芸当は無理でしょうから、曲がるたびに地図の向きを合わせなおし、地図上の進行方向がいつも前になるようにしましょう。

 なお、地図を正置していたら、
「地図を回すな。地図が読めない方向音痴のやることだ」
と、誰かから要らん横槍を入れられることもあるでしょうから、事前に下記リンク先を読んで理論武装しておくといいかも。 

地図をクルクル回す人は、なぜバカにされるのか? 

 曲がり角や目立つ店舗・建物などの要所で地図を確認し、道筋のラインを地図に記入しながら目的地に辿り着けましたか? では、来た道を引き返して自宅に戻りましょう。もちろん、地図の確認と正置は忘れずに。地図慣れしたぶん、往路より復路の方が楽に地図を読めるようになったと感じるのではないでしょうか。 

ステップ1番外編 埠頭で正置の練習

 地図の正置はなかなか難しいものです。地図を素早く正確に正置できる人は、地図読み能力が高い人です。
 初心者が正置の練習をするなら、なるべく視界が開けて遠くまで見通せる場所がおすすめです。近所に埠頭があるなら、そこで練習しましょう。
 1万分の1〜5万分の1ぐらいの市街地図または道路地図を用意します。 

 埠頭に行ったら、まず埠頭の端の方に移動しましょう(端の方が地図上で現在地を特定しやすいため)。現在地を確認したら、地図上に色ペンでチェック印を入れます。
 次に周囲を見回し、遠方に見える目立った特徴物(火力発電所の煙突、高層ビル、沖合いの灯台など何でもいい)を見つけます。目標とする特徴物の位置を地図上で特定し、チェックを入れます。
 地図上で、現在地と目標物とを結ぶ矢印の直線を引いてみてください。地図上の矢印を、現に今 目の前に見えている目標物に向けます。地図上に記入した矢印をまっすぐ伸ばした先に目標物が見えるはずです。現在地と目標物の特定が正確なら、これで地図の正置は完了です。あとは右前方に見える特徴物と左前方に見える特徴物(高速道路・沖合いの防波堤など)の位置関係をもとに、地図の向きを微調整してください。
 最初のうちは、慌てずゆっくり落ち着いて、地図を正置しましょう。慣れてきたら、素早くできるように練習してください。 

ステップ2 電車に乗って練習

 1万分の1〜5万分の1ぐらいの市街地図・道路地図を用意して、各駅停車の電車に乗りましょう。当たり前ですが、ラッシュアワーは避け、昼間の空いた時間帯を選びます。先頭車両の運転室の後ろ(前方の風景がよく見える場所)に陣取るのがベストですが、車窓から外の景色がよく見えるのであれば、どこでもいいでしょう。

 立ち止まって考えることのできる徒歩での地図読みと違い、電車内での地図読みは、素早い判断が必要とされます。事前に下調べをしておくとよいでしょう。市販の本タイプの市街地図を使用する場合、複数ページを行き来することになるでしょうから、付箋を付けておくと混乱しにくいです。
 鉄道の場合、道路と違って右折・左折がなく、交差点もありません。現在地は○○駅から××駅の間に絞り込めます。その点は楽です。
 一般に、JRは私鉄に比べて、駅と駅の間の距離が長くなります。 

 電車内で地図と景色を照合して、今くぐり抜けた高架は国道○号線、この踏切は地図上の県道×号線、という具合に特定していきましょう。遠くに見える山は何山、海側に見える防波堤は地図上のこれ、といった情報にも着目しましょう。
 もちろん、地図は進行方向が上を向くように正置してください。 

おまけ1 地図の縮尺


 地図の縮尺の大小がよく分からない、という人は多いものです。縮尺1万分の1と10万分の1では、どっちが大でどっちが小なんだ、と。そんな人のために、分かりやすい覚え方を紹介します。一回で覚えられるので、一回しか言いません。
 
 縮尺の大きい方が大縮尺、
 縮尺の小さい方が小縮尺です。 

 2分の1カットのケーキと4分の1カットのケーキ、どちらが大でどちらが小か分かるなら、縮尺1万分の1と10万分の1、どちらが大でどちらが小か、分かりますね。 

ステップ3 バスに乗って練習

 1万分の1以上の大縮尺市街地図または詳細住宅地図を用意します。事前にバス路線を下調べして、停留所をつなぐラインを地図に記入しておきましょう。 

 実際にバスに乗り込んだら、前方がよく見える前の席に座り、地図と風景を照合しましょう。目立つ建物、公園、バスが曲がる交差点などは、よい確認ポイントになります。通りの名前や交差点名、国道・県道番号が表示してあれば、地図で確認しましょう。
 バスが曲がるたびに、地図を正置することを忘れずに。 

 バスでの地図読みに慣れたら、もう地図読みは人並みレベルかそれ以上。もう「地図が読めない人」なんかじゃありません。堂々と自動車での助手席ナビに臨んでください。 

おまけ2 左右盲について

 世の中には、右と左の区別がとっさにできない人が一定数存在し、そういう人は「左右盲」と呼ばれます。
 左右盲の人の多くは、落ち着いてしばらく考えれば、ちゃんと左右の区別ができます。
「えっと、箸を持つ方の手がこっちだから、右はこっちか」
みたいな感じで、いったん頭の中で考えてから判断をくだすのです。いきなり「そこ右折」と言われたら、パニックになってしまいます。 

 助手席ナビをする際は、左右盲の人がいることを念頭に置いた上で、右折指示を出す時は、
「コンビニのある角を右折」
みたいに言いながら、左手の人差指で指矢印を作り、大きな身振りで左から右へ動かします。逆に左折指示を出す時は、「左折」と言いながら、右手を右から左へと動かすと伝わりやすいです。 

おまけ3 女は地図が読めない?

 女性の地図読み初心者が練習していたら、ドヤ顔で
「男は原始時代に狩りをしていたから空間認識能力が発達して地図が読めるが、女は地図が読めなくて〜」
などと要らんことを言う外野が必ずいるものですが、ただのトンデモ科学ですから無視していいです。
 反論用に理論武装しておきたい人は、以下の記事を参考にどうぞ。

『話を聞かない男、地図が読めない女』 (4) − 空間能力と地図
『NHKスペシャル 女と男』(3) − 方角・距離・目印
『所さんの目がテン! 方向音痴特集』(4) − メンタルローテーションの過大評価