2012年7月24日、NHK総合『あさイチ』で、方向オンチ克服法が特集されました。
放送内容については、番組公式ホームページ上で確認できます。
・『あさイチ』公式ホームページより
スゴ技Q もう迷わない!方向オンチ克服法
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2012/07/24/01.html
私はこの番組を見逃してしまいました。2次情報に基づいて判断するのは危険ですが、一応ウェブで確認できる範囲内で、気になる点を書いておきます。
番組公式ホームページによれば、取材協力者として名前が挙がっている人物は、村越真氏、新垣紀子氏、小泉成行氏の三人。
村越真氏は、拙ブログにおいても山岳読図界の二大巨頭及び全く地図を読めない人が、突然地図を読めるようになることはあるか?の両記事で言及しています。
新垣紀子氏に関しては、おススメ良記事 − 『スムーズに目的地に着く方法』で言及しています。
小泉成行氏について過去記事で言及したことはありませんが、オリエンテーリング界では有名な人です。
番組内では、三者とも実践に裏打ちされた現実的で具体的なテクニックを指導しており、公式ホームページを見る限りでは良番組です。
では何が気になるかと言うと、放送当日(7月24日)新聞のテレビ番組欄においては、タイトルが『あさイチ スゴ技! 方向オンチ克服できる 脳科学で解決』になっていることです。
実際の放送内容は、脳科学とはほとんど関係ありませんから、番組公式ホームページでは『脳科学で解決』のタイトルは消え、『もう迷わない!方向オンチ克服法』のタイトルになっています。
で、ここからが本題。
この番組、実は当初 脳科学絡みの内容を盛り込む予定であったのが、本放送を前に脳科学部分が急遽カットされたのではないかと推測されます。放送当日、別のニュースに押されて『あさイチ』放送開始時間が遅れたそうなので、その影響だったのかもしれませんし、或いは別の事情によるものだったのかもしれません。
放送されなかった脳科学部分を含む番組内容紹介記事があります。
・NHKあさイチ【方向オンチ克服法地図使い方道覚え方目印空間認知力有川正俊】詳細情報
http://topicsnow.blog72.fc2.com/blog-entry-5965.html
内容は番組公式ホームページの記事とほとんど同じですが、公式ホームページには記載されていない【空間認知力】の項目があります。この部分を引用しておきます。
●空間認知力
地図を見たとき、人間の脳では「空間認知力」が働きます。空間認知力とは物の位置関係を
把握する能力で、建物が実際にどう並んでいるのかとか、目的地までの距離を頭の中で
イメージするときに使います。空間認知力が働くと、脳の「頭頂連合野」という部分が活動
します。この活動を高めることで、地図を見たときのイメージをより具体的にすることが
可能になります。篠原教授が勧める、空間認知力を高めるのにいいトレーニングの一つが「窓ふき」です。
窓を地図に見立てて、自分と窓の関係を大きくつかみ、現在いる場所をスタート地点、
窓の隅を目的地だとイメージします。そのイメージを応用して地図を見ると、頭頂連合野が
働くことがわかりました。<取材協力>篠原菊紀さん(諏訪東京理科大学 共通教育センター教授)
【空間認知力】の項目のみが、他項目から浮き上がりまくって異次元世界を形成しています。
他の三人は、実際的な地図の読み方・ナビゲーションのテクニックをアドバイスしているのに対し、篠原教授のアドバイスは・・・・・・・・・・・・・・・
窓ふき
いや、窓ふきそれ自体は大いに結構。適度な運動になりますし、何より、きれいな窓は見ていて気持ちがいいものです。こういう単純だが建設的な作業は、大いに推奨したいですね。
ただ、窓ふきは窓をきれいにするためにやることであり、どんなに窓を拭いたところで方向音痴は克服できません。
方向音痴を克服したければ、実際に街などに出て自分でナビゲーションして経験値を上げること。肝心なことをすっ飛ばして明後日なことをやっても仕方ないでしょう。
「地図が読めるようにならない」教材 − 悪用されるメンタルローテーション・テストの記事でも触れておきましたが、「空間認識能力(空間認知能力、空間能力)を高める」と称して、実際の地図・ナビゲーションを無視した方法を薦める教材などには要注意です。
もし仮に脳科学部分も放送されていたら・・・・・・いい感じで順調に番組が進行し、最後はきれいに締めくくるかと思いきや、窓ふきオチがついてズコ――ッ!! となっていたのでしょうか。
ともかく、実際の放送では脳科学部分はカットされて何よりです。